フォトアルバム
Powered by Six Apart

« 下駄箱 | メイン | 参ってます… »

2010年9月13日 (月)

真昼なのに昏い部屋/江國香織

511d4cbtdel__sl500_aa300_ 代々続く会社の4代目社長である夫の浩さんと、とても大きな家に住む美弥子。夫婦には子供はなく、美弥子は、「自分がきちんとしていると思えることが好き」、ということをとても重要視していて、毎日手を抜くことなく家を磨き、料理をし、近所づきあいをこなしています。

そんな彼女の家にはいろんな人がやってきては彼女に話を聞いてもらい、彼女はそれを近所づきあいという仕事のひとつとして、嫌な顔ひとつせずに来客を迎え入れてきたのですが、近所に住む、日本贔屓の大学の講師であるアメリカ人のジョーンズさんだけは、彼女に明らかな「異性としての」好意を持っていました。

そんなことに全く気がついていたなかった彼女ですが、ジョーンズさんのいうところの「フィールドワーク」・・・つまり散歩、を二人で楽しむうちに、家の中だけにあった自分のやるべきこと、そういったことだけでなく、<外側>にも、たくさん彼女の興味のあるものを見つけ、とうとう彼女はジョーンズさんと不倫関係になります。

何事にもきちんとしたい美弥子は、せめてきちんとした不倫妻になろう、と思うのですが・・・。

まず、帯には「かつてない文体で」とあるのですが、著者いわく、このですます調の文体は、「翻訳の子供の本の文体」なんだそうで・・・

物語の内容のシビアさを、そのわかりやすい文体が和らげていることは、まず間違いないです。

結論としてまとめてしまうならば、ただの不倫話なわけですよ。ホントありふれた不倫の話。

なのに文章がきれいで、おとぎ話のように語られると、どうもどろどろした感じがなくなって、あたかもきれいにさえ感じるから不思議でsweat01

夫を裏切った行為がひどいとか、夫にも非があったのだろうとか、周りを悲しませて、とか、

そういうことすべてをほんわかとした文体でごまかされちゃってるというか、

逆に感情的にならずに、事実だけを理解できていいんですけどねsweat01

ただあまりにシビアすぎるというか正直すぎるのはジョーンズさんかなぁ・・・。

結局は、<箱の中にいた人妻の美弥子>が好きだったわけで・・・

ラストは、そりゃないだろって感じbearing

とはいえ、

「人妻は物を感じちゃいけないなんて法があるかしら」

と気がついた美弥子だから、この先は大丈夫だと、誰かの付属品でなくとも生きていけると、女はたくましから大丈夫だな、とは思うんですけどね。

私が一番強く共感したのは美弥子のこの言葉。

「一体どうすれば言葉を半分だけ聞きとるなどという芸当ができるのだろうか」

どんな風に話しても、怒りをこめたり、子供に接するように優しく言ってみたり、論理的に説明したり、甘えた風に言ってみたり、

なにをしてもどんなにがんばっても、全く言葉の半分も伝わらない相手って、確かにいるもんなんです。

それを気づかないフリをしてごまかしてきた私も悪いけど、

どうして話をきちんと聞いてくれないのかって、時に自分が人形のようにさえ感じるぐらいつらいことがあります。

そんな人と生活を共にすれば、外の世界を知って、その素晴らしさから引き返せなくなった美弥子の気持ちは痛いほどわかる・・・。

でも、

私には、たくさん外の世界のすばらしさはわかってるから、大丈夫ですけどねshine

                         

                       

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.blog.eonet.jp/t/trackback/367110/25048079

真昼なのに昏い部屋/江國香織を参照しているブログ:

» 「真昼なのに昏い部屋」江國香織 (粋な提案)
せめて、きちんとした不倫妻になろう。 満ち足りているはずの生活から、逃れようもなくどんどんと恋に落ちていく。 恋愛を、言葉の力ですべて白日の下にさらす、江國作品の新たなる挑戦! 私は転落したのか...... [続きを読む]

コメント

さすが!!と思わされる巧みさ。すばらしかったです。
久しぶりに夢中でページをめくりました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

トラックバック、ありがとうございました!

コメントを投稿